『エリザベート』のこと《後編》
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さてでは後編行きましょう!長文だよ!
2018年『エリザベート』《後編》
珠城さんの舞台を観に行くといつも楽しかったとかいう次元を超えて
「今日も愛されたな…」
とオキシトシンドバドバになって帰路につくのですが、それにしても『エリザベート』の愛された感はべらぼうでした。
珠城トートを見ていると2つの熟語が頭に浮かんできます。
一つ目は『悪童』。
シシィをどんな目に遭わせて人生に幻滅させてやろうかと、まるでチェスの駒でも選んでいるように愉しげに事を進めるトートの表情豊かなこと!
企む、哄笑する、ほくそ笑む、悔しげに歯ぎしりする。どのトートも悪童の如く自在でした。
市井に紛れこんでルキーニと結託するカフェの場面や民衆を煽動するミルクの場面。人々は気づかないままにトートに操られ、操る側のトートはあくまでエゴイスティックに人々の運命を翻弄する…。
なるほど『死』というのはこうして日常に潜んでは人心を掻き乱しているのねと思わせる、目の離せない存在でした。
二つ目は『豊穣』。
これはもう珠城さん本人から連想されるワードなのかもしれませんが(笑)、珠城トートは残忍な面を見せたかと思えば時としてまるで菩薩様のようななよやかさを感じさせもするのです。
豊かな実りを思わせる安心感。
たっぷりとふくよかで極楽浄土に誘われるかのような抗い難い誘惑…!
限界まで眠くなった時に目の前にフカフカのベッドがあったら飛び込まずにおられようか!?ってことですよ!(え)
執務室での甘い囁き、ドクトル・ゼーブルガーからの変身(魅惑のシャツイチ)、ルドルフに忍び寄る「闇が広がる」は特に残忍さと誘惑のせめぎ合いが凄かった。
「人生とは重い荷を背負って長き坂道をゆくが如し」な我々にとって「死」は行き着く先なのか転げ落ちる所なのか、どっちにしてもここはどうあっても美しくなければならない。この作品は1にも2にも死が魅力的でなければお話にならない訳です。
その点で珠城さんのトートは完全に圧勝でした。
『エリザベート』は100人見たら100個正解があるような作品なので、珠城りょうファンの私は敢えて断言させていただきます。誰がなんと言おうと、珠城りょうのトートは大正解でした。
珠城さんのトートを語る上で外せないナンバーが2幕「愛と死の輪舞曲〜リプライズ」です。
あれだけ揺さぶり続け最愛の息子を奪ってまでも欲しかった彼女の魂。全てに絶望してようやく身を投げ出したシシィに手をかけようとしたその瞬間、トートは気づきます、この女は「まだ私を愛してはいない」と。
トートはエリザベートの何を求め何を愛したのか。作品中最も難しい矛盾点です。
「愛と死の輪舞曲〜リプライズ」でこれ程までにトートの内面の葛藤を表現したのは18年月組バージョンが初めてだったように思います。
諦観、虚無。そのように表現するトートも良かったですが、こと今回バージョンのエリザにはこのトートの葛藤が不可欠でした。
このブログはずっと珠城さんにフォーカスしてお送りしていますが、語るまでもなく舞台は総合芸術であり、役者同士のぶつかり合いによる火花こそが月組芝居の醍醐味だと認識しています。
このエリザベートも例に漏れずどのキャストも素晴らしく、特にちゃぴちゃんのシシィと美弥さんのフランツ、れいこちゃんのルキーニがとても良かった。
トートとシシィの関係性は各組によって少しずつ違うのが妙味ですが、珠城トートと愛希シシィは力関係が対等で、ぶつかりながら反発しながら共に一つの人生を光と影の如く追従していったような二人でした。
美弥さんのフランツはとても優しい人で「皇帝は自分の為に在らず」と言いながら本来の彼はシシィのように自由に生きることを望んでいたように見えたんですよね。
自由に生きられぬ皇帝が人間らしく生きた唯一の証がシシィへの愛だった。
「僕たちはひとつなんだ」と語りかける言葉が哀しく響く、素敵なフランツでした。
まるで天と地が一つの生命を引き合うような壮大な愛のドラマの中で「愛と死の輪舞曲〜リプライズ」のトートの葛藤が「夜のボート」のフランツの届かぬ愛に呼応し、果たしてシシィの本当の心はどこにあったのか?といよいよ2人の帝王が対峙する「最終答弁」に繋がってゆく。そしてこの流れを導く月城ルキーニのあの狂気!あー!思い出しただけで鳥肌が立つほど興奮してきました…!(どうどう)
これはゴマンとあるエリザベート論の個人的解釈と思って読み流していただけたらと思うのですが、結果的にシシィがどちらを選んだかはもう解らないと思うんですよね。
ただ一つ言えるのは、シシィは最期になって自分の人生の全てを受け入れたということ。
そして、受け入れた先に待っていたのは安らかな死であったということ。
真っ白な魂となったシシィを広く柔らかなかいなに包み込むトート。口づけた瞬間に全てを委ねて力尽きた女の魂を、優しくもたげるトートの掌の力強さ、あたたかさ。これこそが安息の瞬間とばかりに揺らめくスモークの中に消えてゆく2つのよく似たシルエット…
「昇天」の場面。
見終わるといつも「愛された」という充足感と共に「生きなければ」と強く思います。
どんな悪戯に振り落とされそうになっても、全てを投げ出して目の前の豊かな果実にかぶりつきたくなっても、自分の「生」を是として「よく生きた」と思えなければ、あの美しいトート閣下は迎え入れてくれないのだから。
18年月組のエリザ。見る前はもうお腹いっぱいだよー!と思っていた筈なのに、
『エリザベート』という作品のさらなる深淵に触れられた貴重な公演となりました。
できることなら色んな人に18年月組エリザを、珠城さんのトートを見てほしい!きっとみんな、生きる力を貰えるはずだから…。あとフィナーレが最高だから…たまちゃぴ史上一番セクシーなデュエダンだから…!!!!腕つつーってするやつ!!!エーン語り足りない!!
という訳で小池先生、どうかよろしくお願い致します(笑)(まだ言うか)
《次回》私は好きだよ!『夢現無双』について
おっ楽しみに〜〜〜!!