『ピガール狂騒曲』のこと・後編
ジャンヌたん語り、ここからは箇条書きで行こうと思います!
①ジャンヌ←→ジャックの揺れ動き
身を隠すために男の子姿になったはずが、持って生まれた体格とビジュアルの良さが災いしてモテモテになっちゃうのがおかしいやら可愛いやら(笑)
とても自然な変装なのがいいですよね。ナヨナヨすることなく、でもちゃんと(?)美青年にも女の子にも見える!
前半は男の子要素強めで後半はもう普通に女の子でしたね。ほんと珠城さん策士なんだから…
ミステリアスな魅力を撒き散らす銀橋ランウェイ『みんながイメージするジャック・ヴァレット』の場面。
「だって彼、女の子ならみんな憧れる〜♪」
そりゃそうだろ!と謎の立ち位置でオペラロックオン。特に銀橋歩いてきて下手サイドでモデルポーズするとこがツボでした。ここの引きショット東京楽映像に残ってるといいなぁ。
②いつしか芽生えた恋心
シャルルを想って歌う「秘めた想い」。
いったいあの派手なおじさんのどこに惚れたやら、恋とはまこと不思議なもの…うそうそ、れいこちゃんのシャルルはとっても素敵な人でした。あんなピュアでパワフルな人なかなか居ないよ。そりゃジャンヌたんもうっかり惚れちゃうわな。
「ああ、偽りの姿でなければ、真の姿ならばあなたに、この胸秘めたあなたへの想いを、伝えられるだろうか…」
シェイクスピア劇の醍醐味とも言えるすれ違う恋のもどかしさ。歌声もつややかさを増して、思わず駆け寄って抱きしめてあげたくなるような「恋する女の子」でした(珠城さん逃げて)
④ありがたやスカート姿
とりかえばや物語はスターの顔見世的な面もあり、文字通り七変化を楽しめるとあってファンにとっては最高の贅沢!
いやー、ほんの数十秒とはいえスカート姿の珠城さんを拝むことができるとは!ありがたい!!
町娘にしちゃだいぶ貫禄があるお姿でしたが、これがまぁ、そそるんですわ←
あのね、マルセルさん「あいつは上玉だ売れば金になる」言うてますけどね、上玉なんてもんじゃありませんよ。ありゃ吉原なら当代随一の花魁になりまっせ。傾国の美女っていうか、傾いた国を建て直すレベルのやつ。女帝。
ちなみにこの場面で花屋が出てくるあたりからソワソワしだしてるのだいたい珠嫁です(代表:私)
⑤自らの力で幸せを勝ち取る真性ヒロイン
ジャンヌたんは聡明でいつでも前向き。ちょっと押しに弱いけどやると決めたことは一生懸命に頑張っちゃう。結果妙なことに巻き込まれて窮地に陥り、持ち前の忍耐力でくぐり抜ける(笑)そんな王道ヒロイン朝ドラか90年代のりぼんにしか生息してないと思ってたけどパリにおったとは。
珠城さん、こういう王道ヒロインもお似合いになるんですね。まぁあの人の人生そのものがどっか王道ヒロインみたいなところあるからね…
____
母を亡くし天涯孤独の身だったジャンヌが自らの機転で憧れだったムーラン・ルージュに飛びこんで、自分の居場所を見つけるだけでなく愛する人にも出会い、兄と義姉までできてしまうとは。
モンマルトルの墓地で肩を震わせていたジャンヌがお話のおしまいにはたくさんの人達に囲まれて笑っている。しかも恋人となった愛しい人とキスまでしちゃう。なんて幸せな大団円でしょう!
珠城さんにはハッピーエンドが良く似合います。
さて、ここからはフィナーレと、忘れちゃならないヴィクトール兄様についても触れておきましょう!
「えー!たまきちってこんな可愛いかったんだ〜」とお芝居のハッピーエンドモードに完全に油断している珠城りょうビギナーの皆様を一気に沼へ引きずり下ろす、怒濤のフィナーレ。
いやそもそもね、ヴィクトールくんで既にザワついてるじゃないですか(ザワついてるとは)
可愛い可愛い思ってたら突然通常運転の珠城りょうをくらわされた新規珠嫁の皆様、大丈夫その感情正解です。我ら古参嫁も高低差にやられておりますので…。
てか、なんなんですか?!あの人ズルくないですか!?!?振り幅!!
匙加減が絶妙すぎてどっちとも結婚したい…!!!
すみません一旦落ち着きます←
ジャンヌとヴィクトールは同じ人が演じているけど別の人。これもまた舞台と観客の共犯で成立する大きな【嘘】。嘘とわかっているはずなのに普通に「あ、違う人が出てきた」って思っちゃうんですよね。なんという手練。
フィナーレに話を戻しますと、娘役さんに囲まれて踊る場面では「え?さっきまであなたも女の子でしたよね?」と早くも脳内バグが。
「宝塚の男役フィルター」を外して1時間半お芝居をしておきながら再び堂々とそのフィルターを被り直す。一度バラした【嘘】をあっさりと信じさせてくれるのはさすがとしか言いようがありません。よっ!確信犯!!←大空ゆうひ様名言集より
黒燕尾も特筆すべき素晴らしさでしたね。振付は羽山紀代美先生、音楽は「オートバイの男」通称ドンドコドコドコ(勝手に通称つけるな)。
羽山先生の振りって身体の動きが綺麗じゃないとカッコよく見えない気がします。つまり、一つ一つの動きがバシッと決まるとこんなにカッコイイものはない!!って振付です。
前に向いて両膝曲げて飛ぶとこと、横向いてクロールの途中みたいな格好で飛ぶとこと、後ろ向いて指をスナップするみたいなポーズをするとこが好きです(伝われ)。
もちろん黒燕尾のテールペロンも!まさかドリチェで再会できるとは思いもしませんでしたが、今回の作品にぴったりの忘がたい振付でしたね。もうあのテールペロンの技名たまきスペシャルにしたい。
私が運動音痴なせいか、運動神経いい人の動きって見ていて胸がすく思いがするんですよね。
自分の身体能力を完全に統御している人の動きは美しい。
どこにどう手脚を伸ばせば美しいか、珠城さんは完全にコントロールしているんです。
男役として円熟期に入るとは即ちそういうことなのかもしれませんが、あの黒燕尾は何度観ても惚れ惚れしてしまいます。
そして…「メ マン」。
あんだけ爆踊りしたあとスローテンポの歌を歌いながら踊るって、珠城さんの肺活量どうなってるんですか???
黒燕尾の興奮の余韻が残る中、珠城さんがフッと息を整える瞬間が大好きでした。気が動くって言うんですかね。観客の集中力が珠城さんの呼吸に合わせてぐっと高まるような感覚がありました。
珠城さんの手の美しさ、相手役のさくらちゃんを見つめる瞳の確かさ。
官能的な歌詞も相俟って、まるでフランス産のワインに酔うようなうっとりとしたひとときでした。
ピガール本編を見た後のフィナーレ、なんだが泣けるんですよね。
変な例えですが、NHKのど自慢大会ってあるじゃないですか。素人さんが一生懸命歌って、鐘を鳴らすアレです。みんな上手いなぁって思いながら見てると最後にゲストの歌手の方が朗々とその歌声を披露する。当然ながらプロはすごいんですよ。
ピガールのフィナーレも、ああプロはやっぱり違うなぁってなんか感動するんです(笑)
それに『ピガール狂騒曲』はレビュー小屋を舞台にしたバックステージもの。演劇好きにとってバックステージものって特別な感覚があります。ましてやこのコロナ禍で「ひとときの夢に酔える場所」のために奮闘している人々の姿は激しく胸を打つ。劇中の彼らがそのままフィナーレのタカラジェンヌの姿に重なって、なんだか泣けるのです。
大羽根を背負って最後に降りてくる珠城さんは白い衣装でした。デザイナーさんが「白を着せたくなる」と仰るのもよくわかります。
クラシカルで正統派、まさに王道。
小細工無用、威風堂々。
強く大きく、その反面でとても繊細。
何をも包み込むが何とも混じらない。
珠城りょうという人はそんな人です。そんなトップスターでした。
男役としての土台があるからこそ成立する【嘘】に心地よく騙されて、珠城さんをはじめとする月組の多士済済の面々にパリの街へカッ攫われていく楽しさ。
ジャンヌと共に過ごした日々はまさに私にとっても「ベル・エポック」となりました。
大変な時代を歩むことになってしまったけれど、このタイミングで宝塚の基本に立ち戻るような2作品を珠城さんが率いる月組で見られたことは決して忘れられない、一生の思い出です。
さて、長らく珠城さんの軌跡を語ってきたブログですが残す大劇場公演はあと一作となりました。
まだ終わらせたくないので、ここで少し小劇場公演も振り返っていこうと思います(笑)桜嵐記を語るにはもう少したまさくについて掘り下げないことにはね。
では、また!