『カンパニーのこと』

カンパニー好きすぎて収集つかなくなりました(笑)

長文です。

カンパニーちょっと苦手なんだよな〜って人も読んでいただけたら嬉しいです♡

 

ではこちら!参りましょう。

 

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2018年『カンパニー〜努力・情熱・そして仲間たち〜』

原作 伊吹有喜(新潮文庫)

脚色 演出 石田昌也

 

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バレエ×サラリーマン=???

 

 

 

【「君に出会えただけで幸せだった…」

 

製薬会社[有明製薬]の総務課に勤務する青柳誠二(珠城りょう)は2年前に妻を病で亡くし、伴侶を偲びながら単調な日々をやり過ごしていた。

競合他社との合併話が浮上する中で、青柳は突然出向の辞令を受ける。合併のいざこざの裏で起きたあるトラブルを庇った事がきっかけの、体裁のいい厄介払いだった。

出向先は[敷島瑞穂舞踊研究所]、有明社長の娘・紗良が在籍するバレエカンパニーである。

青柳への表向きの課題は、世界的プリンシパル高野悠(美弥るりか)を招聘しての合併記念公演『白鳥の湖』を成功させること…。

 

カンパニーには、以前青柳がスリの被害から助けた高崎美波(愛希れいか)が偶然在籍していた。専門外の仕事に四苦八苦しながら、青柳は美波をはじめ団員のほとんどがアルバイトをしながら公演をこなしている日本バレエ界の現状を知るのだった。

孤高の天才高野をはじめ曲者揃いのカンパニーで、バレエ公演成功に向けて奔走することになった青柳。青柳の止まっていた時計が、ゆっくりと動き始めた…】

 

 

私この作品大好きなんですけど、残念ながら苦手な人も多いようです。

好きだからこそなんとなくその理由は分かります(笑)なのでその辺りを絡めて回想していこうと思います!

 

 

 

まず初めに、作・演出の石田先生はとってもピュアなおじさんです(笑)どうもあのおじさん、ストレートにカッコイイのが恥ずかしいみたいで、というか、カッコイイを見出すポイントが宝塚の主なターゲット層と微妙にズレてるんですよね。

座付きとして致命傷のような気もしますが、この「微妙にズレたカッコイイ」がうまーく嵌るともう大成功なんですよね。

正塚先生もこの傾向ですが、表出がハードボイルドなのが正塚先生で浪花節なのが石田先生ってとこでしょうか(笑)

 

 

さて、翻って本作。

 

 

やはりこの作品の登場人物達も普通の「カッコイイ」からはちょっとズレた所にいます。

バレエの世界は一見華やかだけど、彼らはこのご時世にお金にならない事をひたむきにやっている不器用な人達です。

選ばれし存在の高野さんは人付き合いが苦手でいつも周りと衝突してばかりだし、カンパニーとコラボするダンスボーカルユニットのバーバリアン達も、ビジュアルこそイケてるけど那由多くんは実は泥臭い努力家で。

 

そして、その最たるのがトップスター珠城りょうが演じる、青柳誠二というキャラクターです。

 

会社員と言っても、デキるリーダーでもなければ華やかな部署でもない。半沢直樹的な切った張ったの世界とは真逆の、どこにでも居そうな、その中でもとりわけ冴えないサラリーマン。素朴で、真面目すぎて上手く立ち回ることが出来ない、どこか残念な人。

 

 

 

青柳誠二という役は、もとい、石田作品は、カッコつけたら負けなんです。

言わずもがな、宝塚の男役はカッコつけることを極めていく芸なんですけど、こと石田作品に関して言えば、カッコつけるほど薄っぺらくなってしまう。『カッコつけないほどカッコイイ』んです。

 

これが理解出来ないと石田作品は駄作にしかなりません。けっこうハードル、高いです。(気合い、入ってますみたいに言う)

失敗した石田作品ほどつまらん物は無いし、成功した石田作品ほど胸を打つものは無い。

所謂宝塚的なものを求めている人が彼の作品を毛嫌いするのもここが要因でしょうね。

 

 

 

多分この作品は当時の珠城さんの「逃げも隠れも致しません!」という胆力があったからこそ成立したんじゃないかな。

例えばこれが息をするようにカッコ良さを振りまけるタイプの男役がやったとしたら、端的に言えば今の珠城さんが演じたとしたら、青柳さんの野暮ったさはあざとく映ったかもしれません。

 

 

かっこつけることなく、ひたむきに。

野暮ったさは誠実さに繋がり、その姿にキュンとなる。

そういう人だからこそ、本番に怖気づいて震える美波を抱きしめる様子が、渾身の告白「今夜は月が綺麗ですね」が、汗ばんだ手をスラックスの上でゴシゴシしてから差し出す姿が、優しさに満ちて愛おしく見えるんですよね。

 

 

時々石田作品には「これ宝塚でやる意味ある?」という声を耳にします。『カンパニー』もそう思う人がいるでしょう。

 

結論私は「ある」と思ってます。

 

がむしゃらにもがく姿はできれば人に見せたくない、見たくない。

 

でもやっぱり汗かいてる姿は美しいんですよ。

 

ピュアなおじさんとピュアな人達がそれをパフォーマンスで表現してくれるから「努力」も「情熱」も「仲間たち」も清々しく美しいと思えるんです。そして自身を振り返って「私ももうちょっと頑張ってみようかな」って温かな気持ちになれるんです。

 

 

 

あのおじさん、あれで少し価値観をバージョンアップしてくれたら何も言う事無いですけどね…何度あのチョビ髭毟ってやろうかと思ったことか(暴言)(やめなさい)だいたい価値観古いくせに新しいワードは取り入れたがるのも腹が立つんですよね(もうやめてあげて)(愛情です)

 

それでもなんか憎めないのは、彼が人間の本質を基本温かいものとして信じているのが作品から伝わってくるからなんですよね。

 

 

珠城さんと石田作品の相性の良さも、そこに尽きるのかなと思います。

 

 

 

《次回》併演のBADDYについて!みんな大好きBADDY!